月は無慈悲な夜の女王 自由の代償

ガンダムで描かれる“コロニー落とし”の元ネタになっている小説があると知り、「月は無慈悲な夜の女王」を手に取りました。
ガンダムのように戦争が色濃く描かれていると思いきやそんなことはなく、コンピューター技術者のマヌエル(通称:マニー)とマイクロフト・ホームズ(通称:マイク)という仇名を持ったコンピューターの日常から物語が始まります。
(マイクは今で言うところのAIのようですが思考するだけでなく、自意識を持ち合わせています)

マニーとマイクを含めた物語の主要人物が四人いて、みんな月世界(ルナ)に住んでいます。それなのにタイトルは地球目線でつけられている様に感じられたので物語がどう進むのか楽しみでした。

月世界での生活はリアルに描かれており、作中にでてくる「魚は水を知らない」という言葉が印象に残ったものの1つです。(中国のことわざか何かだと書かれていたと思う)
地球の人間は空気があるのが当たり前だと思っていることを指摘したもので、月世界では空気は有料なことからきています。

私はマニーの生活で月世界の日常を知り、月世界と地球との関係性を理解しました。
地球から独立しなければいけない問題を月世界は抱えていたのです。
しかし独立戦争をしかけようにも、宇宙船やミサイルといった武器を一切持っていない。
そんなときマイクが言うのです。
「われわれは何も持っていないが石を投げつけることができる」
私は読みながらゾッとしました。石を投げつけるという一見無力な人間の悪あがきに聞こえるこの言葉が持っている威力を察することができたからです。
(これがコロニー落としの元ネタかと…)

独立戦争の話ですが、それ以外の見どころもある作品でした。
マイクの成長です!物語が進むにつれて人間性を獲得していったマイクは“生きている”といっていいものでした。
…ただマイクは地球側が月世界(ルナ)を管理するために作った政府、行政府内に存在するコンピューターだということが気がかりでした。
100%味方なのだろうかと。
月世界に残っている地球のエンジニアがマイクに接触したりすることはないかと。
私はマイクとマニーの関係が気に入っていたのです。常に最初の友人であるマニーの味方であれと思いながら読んでいました。

あとがきを読むと日本では「夏への扉」の方が有名みたいで、この小説について語れる人と出会うのは難しそう…。
今度は「夏への扉」も読んでみようと思います。




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