変身 主軸が家族のグレゴール・ザムザ

フランツ・カフカの「変身」について私の友人はこう言っていました。
「主人公が朝起きたら巨大な毛虫になり、そのせいで家族に疎まれる。何の救いもなくそのまま死んでしまう、どうしようもない話」だと。

職場の同僚も言っていました。
「主人公が虫になって何が伝えたいのかわからなかった」
「ずっと部屋に引きこもって家族を苦しめる、ニートか!?と思った」
「この話は気持ち悪くて嫌い」

私の「変身」に対する期待値はおのずと低くなります。
しかし古本屋に行くと解説も収録されている文庫が目に入り、これなら不可解なこの話を理解できるかもと思い購入してみることにしました。

結論から言うと解説を読まなくても楽しめました!(結局解説は読んでない)
ここからは私の感想です。

グレゴール・ザムザは自分が化け物じみた図体の虫けらに変身したのに悲観的ではありませんでした。
彼は家族を支える大黒柱で、虫けらに変身を遂げても仕事のことを考えます。
しかし、グレゴールは勤め先が好きではありません。両親が社長に借金をしているので嫌でも献身的に働いていたのです。(社畜のような働き)
グレゴールは虫けらの図体で出勤できずにいるのに、部屋の外で「何事だ、遅刻の理由は何だ」と騒ぎ立てる家族や業務代理人がいます。
対応をしようと自室の鍵に食らいつき開錠し、扉を開けると虫けらの姿を見られました。

家族はもちろん泣き崩れ、業務代理人は顔をそむけます。

それでもグレゴールはこのまま業務代理人を帰すと、会社での地位が危険にさらされると仕事のことを考えていました。(どれだけ仕事に打ち込んできたのかわかります。家族を支えるのに必要なことだったのでしょう)
一度部屋から出たグレゴールでしたが、父親により部屋に追い返されてしまいます。
(しかも後に外側から鍵もかけられ、閉じ込められる)

この後から、グレゴールの新生活が始まります。
父親は抑圧的なところがあり、母親は虫けらになったグレゴールを見ると気絶してしまうほどか弱い人でした。
この両親はともかく妹のグレーテとグレゴールは仲が良く、虫けらになった後の世話はグレーテが一手に引き受けます。(もちろんグレーテも虫けらの姿を恐れていますが、世話をするのです)
世話をするグレーテとグレゴールのお互い気遣いあっていることがわかる描写が出てきます。
そこも見どころの1つだと思いました。

この物語の佳境にはグレーテとグレゴールが同じ結論に辿り着きます。
それが悲しくも、一筋の希望のように思えました。

あんまり書くと読む楽しみを奪ってしまうのでここまでに…。

話を変えて、手塚治虫の「ザムザ復活」という短編をご存じですか?
私は先に「ザムザ復活」を読んでいたので、虫けらをとてもイメージしやすかったです。
(虫けらという共通点はありますが、まったく違う話)

ちなみに私の持っている手塚治虫短編集はページはずれありです。できることなら職場に持って行って修理したい!





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